48話 - 想い(2) - Skyrim RP日記  

空と雪と葡萄色

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48話 - 想い(2)

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Bymagmel

「…メル」
大学の寮で一人ぼんやりとしているところへルーシスがやって来た。
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「ロードから聞いた。お前、あいつの告白を無下にしたんだってな。何も言わずに」
「……私では彼の気持ちに答えられないから…」
「それならどうしてその理由を話さないのだ。お前の本当のことを」
「…迷ってしまったの…話してもいいのか。私の正体を知ったことで彼の気持ちが変わってしまうのが怖かったのだと思う。…変よね」
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ルーシスは軽く溜め息をついたあと、穏やかな口調で話し始めた。
「まったく…。恋焦がれた男に好きと言われて嬉しかったのだろう? あいつの過去を知っていれば、その言葉が軽い気持ちから出たものではないことくらい分かる筈だ」
「……」
「お前も逃げずに、真摯に向き合わなければ駄目だぞ。明日からも一緒に旅を続けるつもりがあるのなら」
長い沈黙のあと、深く頷いた。
「…ええ。もう隠してはおけないから、私の正体は伝える。でも、この気持ちは…どうしたらいいのか分からなくて…」
「お互い同じ感情を持っていることが分かって、今更迷う理由があるのか?」
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「いくら”人”の心を持っていたって…やっぱり、私は人ではないから。それに……そのことで私はいつか彼を傷付けてしまいそうで。だったら、はじめから…」
「初めからその想いは無かったことにするのか?」
「ええ…」
ルーシスは更に溜め息をついた。
「…メル。相手のことを思ったつもりになって、強がって自分の気持ちを押し殺したところで何になる。私に言わせれば、そんなものはただの独りよがりだ」
「…何故?」
「本当のことを話してくれない、嘘もつかれる。相手にしてみれば、受け止める度量がないと言われているようなものだ。お前にその気はなくても、あいつはそう感じるだろう」
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「…っ」

「ひとつ聞くが…お前が初めてドラゴンの魂を吸収した時、あいつもいたのだろう?」
あの夜のことを思い出した。
「ずっと…傍にいてくれた」
「ドラゴンも、その魂を吸収するお前も、ロードだってその時初めて目の当たりにしたはずだ。だがそれでも一緒に旅を続けてきた。…それが答えじゃないか?」
ルーシスに言われハッとした。
「こんな私でも…彼は受け入れてくれると?」
「お前の正体を知って気持ちが揺らぐような男ではないと、私は思うのだがな」

ロードはいつも気遣ってくれた。これまで、ずっと…。
「私…自分のことしか見えていなかったのね…」
俯く私にルーシスは優しく言葉をかけた。
「決心はついたか?」
「……ええ。彼に…すべて打ち明ける。本当の気持ちを伝えることがロードと…自分自身に対する誠意だと思うから」
「それが良い。そうだな…私がお膳立てしておこう。お前は日の出の時刻に大学の入り口で待っていろ、あいつを来させる」
「え? でも、そんな…わざわざ来てもらうなんて…」
「ここや宿では人の目があるだろう? あいつが来たら、大事な話があると言って静かな場所で切り出せばいい。私が手助けできることはここまで。あとはお前次第だ」
「…ありがとう。ルーシスには、いつも助けられてばかりね」
「人生経験はお前より積んでるからな。こんなときくらい世話を焼かせてくれ」
そう言って軽く頭を撫でる彼に、少しだけ微笑んで見せる。いつもと変わらない優しさが心地よかった。

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「何も縛られない、お前の正直な気持ちを伝えろよ。…後悔はしないようにな」
「…はい」

一人部屋で考える。
諦めようとしてもこの想いを消すことなんて出来なかった。
私は人ではない。先のことなんて分からない。けれど、たとえ叶わなくても、この気持ちだけは伝えようと決めた。


翌朝。水平線からじわりと日が昇るのを横目で見ながら大学の入り口に向かうと、既にロードが立っていた。
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近づくほどに心臓の音が大きくなっていく。
深く息を吸い、意を決して声をかけた。
「ロード。おはようございます。待たせてごめんなさい」
「…おはよう。俺もさっき来たところだから」
振り向いた彼はそう言うとまた海に視線を向ける。
「水平線から昇っていく太陽を見るのは初めてなんだ。いいもんだな」
「そうですね…。あの、眺めの良い場所があるのですが、良かったら行ってみませんか?」
「ん? …ああ、そうだな」


大学の屋上に来た。ここなら眺めも良くて、人も滅多に来ない。落ち着いて話せそうだ。
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「うん…確かに良い眺めだな。氷原も見渡せて」
「大学にいた頃この場所を見つけて…よく朝日を眺めていました」
「そうなのか。ずっと見ていると、なんかこう…気持ちが落ち着くよ」
「ええ…」
お互い無言で、昇っていく太陽をただ眺めた。
少し風が強くて、思わず肩に手を当てる。
「メルヴィナ。風が冷たいけど寒くないか?」
「…少しだけ」
「前から思ってたんだ。…特に肩の辺りが寒そうで、さ」
ロードはそう言って笑うと、自分のマフラーを私に巻いた。
「あ…ありがとうございます」
照れ笑いで答える。
マフラーを巻き終わると、ロードは小さく「ごめん」と呟いた。
「昨夜は…感情に任せてあんなこと言ってしまった。あのあと、どんな風に君と顔を合わせたらいいのか…悩んでいたんだ」
「私のほうこそ、何も言わず逃げ出してしまって…ごめんなさい。ルーシスが二人で話す機会を与えてくれて。今日は…心を決めました」
「話してくれるんだな…?」
ロードの静かな問いかけにゆっくりと頷いた。
「ええ。あなたに黙っていたことを…全て話します」


それから私は、ゆっくりと昇っていく太陽と呼吸を合わせるように、順を追って説明をした。
世界のノドで出会ったパーサーナックスの事、彼から告げられた私の本当の姿のこと。
ロードはそれをどんな表情で聞いているのだろう。確かめることが怖くて、ぼんやりと海に視線を移しながら話した。
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「……ドラゴン?」
ロードが口を開いたのは、話し終わってしばらくしてから。
恐る恐る顔を上げると、彼は目を丸くして私を見ていた。
「…君の魂がドラゴンと同じものだとは理解している。その身体も…実はドラゴンだったというのか?」
「…ええ。パーサーナックスは私を”ドラゴン”と呼んだ。ドラゴンの彼には何かが見えていたのでしょう。アカトシュが、どうして私をこのような人の姿に作ったのかは分かりませんが」
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「……」
ロードは再び沈黙した。
「…驚きましたか?」
「あ、ああ…。そりゃあ…どう見たって君は人間の女性と変わらないから…」
驚いていても、そこに嫌悪感のあるそぶりは全く見られない。彼の表情に安堵して、小さく微笑む。
「そうですよね…。私も信じられませんでした。…正直なところ、自分がドラゴンと知ったところで自覚もまだありません。今まで普通の人間の女性として生きてきたのですから。私の魂はドラゴンだと言われ、今度は身体まで…。けれど、心の奥で自認した私がいることに気付いたのです。ああ…やはりそうなのか、と」
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「……だから、話せなかったのか」
静かに頷く。
「…怖かったのです。…私の正体を知って、あなたが離れてしまったらと思うと…怖くて言い出せなかった。…あなたの気持ちを知ったときだって、どう答えたらいいのか分からず…」
「…」
「嬉しいのに、悲しくて。ほんの少し前の自分なら…もっと素直に…」
気持ちを伝えると決めたはずなのに、思うように言葉が出ない。俯いて、震える指を抑えるように両手を重ねる。

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「…っ」
ロードは私の肩に手を回すと胸元に引き寄せた。
「自分が必要とされていない気がして、話してくれないことに苛立ったりして…すまなかった。俺は君の気持ちも考えずに、追い詰めるようなことをしてたんだな…」
「あなたが謝る事では…」
「……怖いのは、俺も同じだよ。君を好きになって、また…大切な人を失う恐怖と隣り合わせになるのが怖くて、踏み込めなかった」
「…ロード」
「でも…君が他の男を選んだら。そう思ったとき、それ以上に不安でたまらなかったんだ」
抑えた声で話すその言葉に、心音が一際高く身体に響いた。

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「好きだよ。…俺は君と出会って変われたから、こういう感情を持てるようになったんだ。君の正体を知ったって、この気持ちは変わらない」
耳元で聞こえる声は、そのまま私の心を揺さぶるように響く。
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「…これから先、私はあなたを傷つけてしまうかもしれない。本当に、それでも…?」
「全部受け止める」
そう答える彼に、再度確認する。
「本当に、信じてもいいの? こんな私でも…」
ロードは困ったように笑った。
「そんなことで変わる想いなら、君がドラゴンボーンと知った時とっくに尻込みしてたさ。……君は? …まだ、気持ちを聞かせてもらっていない」
まっすぐに見つめる彼の瞳を、朝日の光が照らす。

「…すき。あなたが好きです…」
想いを告げると、ロードは薄紅色に透き通った目を細めて微笑んだ。

初めてあなたへの想いに気付いたとき、叶うことはないと伝えることを諦めた言葉。
包み込むような彼の温かさが私の気持ちを引き出した。
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「ロード。一緒にいて…ずっと、私の傍にいて…」
堰を切ったように素直な想いが溢れる。
気持ちを確かめ合って、もう彼が離れることなど考えられなかった。

「前にも言っただろう? …君から離れる選択肢が俺にはないから」
ロードは優しく髪を撫でながら続ける。
「…好きになる前からそうだった。自分でも不思議なくらい、君のことが放っておけなかったんだ」
「……っ」
胸が一杯になって声が出ない。
彼に答えるように両腕を背中に回すと、きつく抱きしめられた。
その腕の力に想いの強さが表れているようで、息苦しいのに満たされていく。
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「…ロード」
「…ん?」
「私は…ドラゴンにはなりたくない。けれど、いずれ本当の姿を受け入れなければならない時が来ると思っています。もしも、私がドラゴンに変わって心を失くし、危害を加えるようなことがあれば…私を止めてください。あなたの力ならそれが出来ると信じています」
腕の力が緩められ、身体が離れた。
真剣な、でも少し柔らかい眼差しで私を見つめる。
「…君が望むならそうしよう。勿論、君を助けることを一番に考えるけどな」
そう言って微笑んだロードに、私も微笑み返す。
「あなたがいれば…私はきっと、自分を見失うことはないでしょう。この感情が、身体も魂もドラゴンである私にとって、”人間”らしいと思える物だから…」
「メルヴィナ…」
「これからも、傍で見守って下さい。今までよりも、もっとあなたを頼ってしまうと思いますが…」
「構わない。もっと甘えてもいいくらいだ」
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そう言って微笑む彼に、同じように微笑み返した。


少しの沈黙。
顔を間近に寄せられ瞳を閉じると、額に唇がそっと触れた。
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Comments 2

もきゅ  

こんにちは(๑╹ω╹๑ )
まずは復帰おめでとうございます!

いいないいな~。とうとう二人の気持ちが結びつきましたね。
こういう気持ちをやりとりするシーンに、しっかりと1回分の話を割いて丁寧に表現されていていいな~(←語彙貧弱w)と思いました。
magmelさんのお話の印象は「丁寧」だなぁ、といつも感心させられます。

二人の意思がそろった…ということは、今まで以上の厳しい試練がきても乗り越えられるはずですよね。(書き手視点で考えちゃう癖が…w)

メインストーリー的にも星霜の書探索は中盤だし、いろいろ大きく動き出しそうで楽しみです^^。

私のほうもなんとか第1部を着地できそうです。
よろしければまた意見いただけると嬉しいです(=°°)つ

これからも健康に気をつけて頑張ってください(^_^)/

2017/04/07 (Fri) 13:35 | EDIT | REPLY |   

magmel  

Re: タイトルなし

>もきゅ様

こんにちは!

ありがとうございます~(*^^*)
恋愛シーンは恥ずかしがってちゃ書けない!を信条に、かなりノリノリで書ききった感じです。
しかしアップした後に見返すとなかなかこっぱずかしい気持ちになりますね…^^;

二人の関係が一段落ついて、物語も後半に入ります。
ストーリー展開はメインクエストに沿いつつ、オリジナルな設定が濃い目になっていく予定です。
そして時折甘々シーンを織り交ぜたい…なんてw

どうぞ引き続きお付き合いいただけると嬉しいです(*^▽^*)

もきゅさんのお話も毎回じっくりと読ませてもらっています。
いよいよ大詰めといったところでしょうか?楽しみです♪
またお邪魔しにいきますね~(*・ω・)ノ

2017/04/08 (Sat) 11:20 | EDIT | REPLY |   

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