55話 - 星の夜に - Skyrim RP日記  

空と雪と葡萄色

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55話 - 星の夜に

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Bymagmel

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「いよいよ明日はイヴァルステッド。ドラゴンレンド…だったか。それを習得したら、アルドゥインとの決戦も近いな」
「ええ。考えてみればあっという間だったわ。私…ろくに修練もせず、とんとん拍子に進んできてしまった気がする」
ヘルゲンでアルドゥインを初めて見たときから、これまで大した日数がかかっていないことに今更気付く。
「はは、そうだな。いささか急ぎ足だった。だが、ゆっくり進もうと言っても聞かなかったろう?」
ルーシスがパイを口に運びながら笑う。
「早く進めるのなら、その分早く終わらせることが出来るから。各地に出没しているドラゴンの被害や、アルドゥインのことだって…」
「その通りだな」
穏やかに微笑むルーシスに、少し姿勢を正して頭を下げた。
「ルーシス、今までありがとう。私一人ではここまで到達出来なかった」
「おいおい、まるで最後の決戦前夜のような物言いじゃないか。まだまだこれからだぞ」
「そうね。けれど、お礼くらいはいつでも言っていいでしょう?」
「それもそうか」
二人顔を見合わせて笑う。
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「メル。聞こう聞こうと思っていたのだが…。お前、星霜の書についての覚悟は出来ているのか? その…」
ルーシスは改まると、遠慮がちに問いかけた。
書を読む者が視力を失う可能性があることを忘れていたわけではない。
「覚悟とは呼べないものだけど、私は人と違う分、本に書かれているようなことにはならない気がするの。勿論、全く違うことが起こるかもしれない。でも、何も起こらない可能性だってある。こう考えるのは楽観的過ぎるかしら」
ルーシスは私を見て少し黙った後、空になったジョッキに手を伸ばした。
「楽観的だな。だが、悪くない。…本心では思い悩んでいるかもしれないと気になっていたのだが、余計な心配だったようだな」
「心配してくれていたの?」
「そりゃあな」
照れ隠しのようにジョッキにワインを注ぐルーシスに微笑む。
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「私…吹っ切れた、と言えばいいのかしら。この身体の事はどうすることも出来ない。同様に、自分のなすべきことからはきっと逃げられない。ならば受け入れて、この力を有効に使っていきたいの。それに…強敵に太刀打ちできる力を持っていることに気付いたから」
「ブラックリーチでの出来事以来、自分に自信がついた感じか?」
「ええ」
頷く私の表情に嘘はないと信じてくれたのか、ルーシスも笑顔になった。
「分かった。お前が安心して力を発揮できるよう、私はこれからもお前のサポートをしよう」
「ありがとう。よろしくお願いします」
「ロードにも今後の事はしっかりと頼んでおけよ。…まあ、私が言うまでもないか」
軽く笑いながら返事をして席を立つ。

先に食事を済ませて馬の世話をしているロードに会いに行った。
「ロード。お疲れ様です、私も何か手伝いましょうか?」
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「ああ、ありがとう。一通り済ませたから、あとは体を撫でてやってくれ」
三頭の手入れをもう終えたのかと驚きつつ、極光号の体や顔を撫でて「また明日からお願いね」と声をかけた。
「明日も晴れると良いのですが…」
そう言いながら空を見上げると、頭上には満天の星が輝いていた。
「いつも雪空のウィンターホールドでこんな星空が見えるなんて珍しい…」
思わずそう呟くと、ロードも空を見た。
「本当だ、雲一つ無い」
星を眺める彼の横顔を見つめた。
もう少し二人で過ごしたい。話すきっかけを探すうちに極光号を撫でる手が止まる。
「…それじゃあ、宿に戻るか」
宿屋へ戻ろうとするロードを呼び止めた。
「あの、良かったらもう少し星空を見ていきませんか?」

歩きながら空のよく見える場所を探す。木々を抜けると視界いっぱいに星空が広がった。
「わあ…綺麗」
感嘆の声を上げる。
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「今夜は空気が澄んではっきりと見えるな」
「ええ…。本当に綺麗で…ずっと眺めていたいです」
煌く星を見つめながら上擦った声を出す私にロードが笑う。
「ハハ。確かに綺麗だけど…。君の居たハイ・フロスガーでもこのくらいは見えただろう?」
言われてハッとする。
「どうしてでしょうね…環境の変化で今までとは違うように感じられてしまって…」
「当たり前で気に留めなかったことの大切さに気付いたとか、そんな感じなのかな」
「そうですね…。この世界は無限ではない。それを意識するようになったから…かもしれません」
そう言って軽く笑うとロードも微笑んだ。

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二人で星を見ながら話す。ゆっくりと時間が過ぎていくような、穏やかな空気の中にいるようだった。
「ロードの故郷シロディールも、こんな星空が見えますか?」
「そうだなあ…こうしてじっくりと見るようなことはなかったけど、月を見ながらリュートを弾いたりはしていたよ」
「素敵ですね。あなたの故郷はどんな所なんですか?」
「シロディールの、コロールという町なんだ。スカイリムよりも過ごしやすい気候で、秋は特に紅葉が綺麗でさ。馬に乗って遠出なんかも楽しんでたよ」
それから彼は、故郷や家族のことを私に話してくれた。
スカイリムに来る以前は父親の営む馬屋で手伝いをしていたという話を聞いて、手際の良い馬の手入れにも納得した。

使命を果たそうと先のことばかり考えていたせいか、思えば私は彼とお互いについて会話をする事がほとんどなかった気がする。
今、少しだけ二人の時間が持てたことにささやかな幸せを感じた。
「…落ち着いたら行ってみたいです」
「コロールに?」
「ええ。あなたの生まれ育った故郷を見たいです。それに、もっと色々知りたくて。この世界のことも…あなたのことも」
「……」

ロードは星空を遮るように目の前に立つと、私の頬に少し冷たくなった手の平をそっと添えた。
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一瞬肩を震わせる。
「ごめん…冷たかったか?」
離そうとする手に、咄嗟に自分の手を重ねた。
「少しだけ。でも…こうしていると温かいです」
重ね合わせた手と、触れられた頬が熱を持ったように熱くなる。
自分のとった行動が急に気恥ずかしくなって目を伏せた。
二人とも無言のまま。
沈黙には慣れているはずなのに、なんだか今は落ち着かない。
「私…ずっと探していたあなたがこうして傍にいて、目の前で私を見ていることが…少し信じられません」
照れ隠しに冗談めかして言う。
「俺の気持ちを、まだ信じられないってこと?」
「あ、いえ…。あの日、リバーウッドであなたに出会わなかったら、こうはなっていなかっただろうなと…」
「そうだな。たまたまリバーウッドに巡回に来ていた俺と、ヘルゲンからハドバルと逃げてきた君。ホワイトランで厄介事を引き受けた君と、何となく放っておけなくて助け舟を出した俺…。一つでも欠けたら今こうして一緒にいないかもな」
「捕まらなければ、そもそもあなたと会うこともありませんでしたからね。処刑されかけたのも今となっては必然の成り行きだったのでしょうか…」
他人事のように言うと、ロードは「際どいところだな」と笑った。
二人笑いあい、また黙り込む。

「けど…」
落ち着いた声で先に沈黙を破ったのはロードだった。
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「俺にとって君は必要な人だから、どんな事があったって出会ったんじゃないかと、今はそう思うよ」
穏やかに話す彼の目を、気付けばじっと見つめていた。
「私を…必要としている…?」
頷くロードに、更に問いかける。
「私は頼りになりませんし、あなたに必要とされるようなところってどこなんでしょう…」
純粋な疑問をぶつけると、彼は軽く笑いながら答えた。
「必要とするって、目に見えることばかりじゃないさ。強いて言うなら…君と一緒にいると穏やかな気持ちになるんだ。ずっと傍にいたいと思うような」
「そ、そんなことで…」
予想外の返答に拍子抜けしてしまった私を見て、ロードは微笑んだ。
「些細な事と思うかもしれないが、これって重要だぞ。誰でも良いわけじゃないからな」
いつの間にか背中に回されていた手が、私を抱き寄せた。
「……そう、なんですか。ありがとうございます…」
近付く顔とまっすぐに向けられた視線に照れて俯く。

「さっきの話だけど…。全部終わったら一緒に……二人で行こうか。君に故郷を見せたい」
囁くような声に顔を上げた。
「……」
その言葉に特別な意味が込められていることは、彼の眼差しから容易に理解できた。
「気が早いかな。知り合って間もないのに」
困ったような笑顔で謝る彼に、首を大きく振る。
「いえ。ご、ごめんなさい、すぐに言葉が見つからなくて……」
ここが暗がりじゃなければ、きっとまた「頬が赤い」と言われていただろう。
「…嬉しい」
たった一言、小さな声で気持ちを伝えると、ロードはわずかに目を細めた。
頬に添えられていた手が優しく髪を撫でる。
「メルヴィナ」
「……」
近付く瞳を見つめながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
額に軽く唇が触れた。

少しの間。
目を開けようとしたとき、不意打ちのように唇を重ねられた。
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「……っ」

触れてすぐに離れた短い口付け。
私も、彼も、顔を寄せて黙ったまま。
星明りの下、表情がはっきりと読み取れなくても、お互いに同じ気持ちで相手を見つめていることは分かる。
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もっと触れたい。触れてほしい。
「…ロード…」
背中に回した腕に力を入れ、少し背伸びをして目を閉じる。
「……」
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気持ちを確かめるように交わすキスは、息が苦しくなるほど長いものだった。


顔を離し、熱のこもった視線で見つめ合う。
はにかみながら微笑んで見せると、彼は優しく笑った。
今は言葉を紡ぐ必要もない。
触れ合って確信できたから。
私には彼が必要で、彼も私を必要としてくれる。

胸元に顔を寄せると、そのまま抱き締められた。
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「ロード。私も同じでした。あなたといるだけで安心して、心が穏やかになれて…。あなたと会えて、本当に良かった」
「…メルヴィナ…」
彼はそれ以上何も言わなかった。
ひとしきり抱き締め合った後、名残惜しそうに身体を離す。

今夜の事は忘れない。
この想いがあれば、あなたがいれば、きっと苦難も乗り越えられる。

見つめ合い、誓うようにもう一度キスをした。
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Comments 2

もきゅ  

いい夫婦の日(11/22)に、なんてモノ見せつけるんですか~!ε=ε=(*ノ>Д<)ノギャー、トロケル~w
キスシーンは配置が難しいですよね。うちでやったときも何度も位置合わせに失敗して、そのうち「なんでこいつらのためにこんなに苦労してんだ自分」みたいな気持ちになったことがありますwww

年末はどこも忙しいと思うけど、お体に気をつけて乗り切って下さい~ヾ(๑╹◡╹)ノ"

2017/11/23 (Thu) 10:54 | EDIT | REPLY |   

magmel  

Re: タイトルなし

>もきゅさん

さすがもきゅさん!気付いてもらえて嬉しいです(´∀`*)
良いタイミングなのでこの日を狙って更新しちゃいました。まあ自己満足なんですけどw

キスシーンは通常のペアポーズに輪を掛けて微調整が難しいですね。
1cm単位のところを1mm単位で調整したいくらいの感覚で^^;
分かります、セッティング中は真顔(・_・)になってますww
ラブシーンの撮影現場とかってこんな空気なのかな~と思ったり。
その分出来上がった後は自萌え全開です(笑)

この時期はマスク必須ですね。
もきゅさんも風邪等気をつけてお過ごしください~(*・ω・)ノ

2017/11/23 (Thu) 21:24 | EDIT | REPLY |   

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